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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情




「あ――っ!
ストッキング伝線しちゃった……
替えなくちゃ――っ」


四月。

剛の高校入学の朝、髪を結い、セレモニースーツを着た私はドレッサーの前で叫び、クローゼットの中を引っ掻き回す。


「きゃ――っ!
これも、これもなんか穴開きとか、伝線してるし!
無事なストッキングがない――!
どうしよ……あっ!
コンビニで買ってこうかな」


「騒がしいわねえ……
どうしたの?」


花野がドアを開け、呆れた風に言った。


「あ――
お母さ~ん!
ストッキングが……」


花野は、苦笑して溜め息を吐くと、エプロンのポケットから新品を出した。


「流石お母さん!
何でも用意してるのね~!」



「貴女はストッキングを穿くの、下手だからねえ……
こんな事もあろうかと持ってきておいて良かったわ」



花野はコロコロと笑う。


私は、母が家に居てくれる事に大きな安心を覚えていた。


悟志が倒れて病院に運ばれてから二週間が経つ。

大量に血を吐いた悟志だったが、奇跡的に命に別状は無かった。


色んな検査をしたが原因が不明で、医師も首を傾げた。


私は毎日病院へ通い、時には家族棟へ泊まる事もあった。



家の事を花野が手伝いに来てくれたり、泊まってくれるので、私は大いに助かっている。



ただ、悟志の意識は戻らないままだった。
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