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愛しては、ならない
第23章 滅ぼせない恋情②



あの日。

あの夜――


俺に聞かせる様に、寝室で悟志が菊野を烈しく犯して、そして倒れた夜。


悟志は、俺と菊野の関係に何かがある、と確信を持ち、彼女を言葉と身体で責めたらしい。


そして、その場で倒れて――


同じ家の中で祐樹も居たから、寝室の惨状をもし見て聞いたりしてしまったら――


と気掛かりだったが、祐樹は幸いぐっすりと眠り、翌朝まであの騒ぎを知らなかった。


寝室で、紅い血で白い肌を染め、倒れた悟志を膝枕し虚ろに宙を見詰める菊野を、俺は美しいと思ってしまった。


凄惨な光景の筈なのに、恐ろしい場面と言ってもおかしくないだろうに、なのに俺は――


裸の白い背中、丸い曲線の双丘、その細い指先を彩る紅い色が、彼女をまるごと美しい色彩に染め上げたかの様に見えた。


こんな風に感じる俺は、やはり異常なのだろう。


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