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愛しては、ならない
第29章 虚しい演技を止める時

『……どうしたらいいの?』


彼女は、俺の猛りをその柔らかな指で愛しながら、苦しげにそう呻いていた。

あの言葉の答えを、彼女は俺に求めたのではない。

自分に向かっての問い掛けだったのだろう。

この恋の主導権を持っているのは、彼女だ。

俺は、力で彼女を思い通りにすることは出来ても、彼女が拒むなら、何も手出しは出来ない――

彼女の一言で、昨夜の熱い抱擁は

『一夜の過ち』

という安っぽい代物に置き換えられてしまうのだろう。

俺も、確たる答えを自分の中に持っている訳ではなかった。

ただ一つ確かなのは、菊野を愛している、という事だけだ。

菊野が何より、誰よりも大事で、いつも抱き締めていたい。


……それだけでは……いけないのか?

俺は、無意識に唇を強く噛んでいた。
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