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愛しては、ならない
第29章 虚しい演技を止める時


両親は、多分愛し合っていた――のだろう。

しかし、大きな疑問が俺の思考をストップさせる。

愛し合ってできた子供――それが俺ではないのか?

その存在を、何故あんな風に扱ったのか。

以前は、こういう事を考えただけで吐き気が込み上げてきた。

だが、俺が昨夜菊野とした行為は、両親が幼い俺の前でしていた事と同じだ。

そう思った途端に身体の底から強烈な嫌悪感が沸き上がる。

……違う。

俺と菊野の行為は、両親がしていたようなおぞましい物とは違う。

両親のそれは、単なる身体と身体のぶつかり合い……快感だけを得る為の動物の本能だけの物だ。

俺と菊野のセックスはお互いの愛を確かめあう手段なんだ――



そんな考えを巡らせながら、俺は不意に可笑しくなってきた。

愛を確かめあう手段だって?

嘘を付け……

俺は、単に菊野の身体に溺れて、欲を放ちたかっただけではないのか?


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