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愛しては、ならない
第31章 企み


「まあ~喧嘩の傷は男の勲章ってか?」


森本が軽く笑って背中を小突いてきて、俺は甘く苦い夢想から醒めた。

清崎が、軽く眉をひそめて彼を咎める。


「もうっ……そんな子供みたいな事……
駄目よ喧嘩なんて!」


「はは……そんなんじゃないよ」


「本当に?」


俺にひたむきな眼差しを向ける彼女が可愛いと思った。

深みにはまる前に、彼女を俺から引き離さなければならない。

今日、切り出すつもりで俺は彼女を放課後誘ったのだが、森本が


「な~暇なんだよ俺~

剛、遊んでくれよ」


と、チャイムが鳴った途端に俺にまとわり付いてきたのだ。

なんでも、彼女と別れたばかりで手持ち無沙汰らしいのだ。


「暇潰しなら、他所を当たってくれ」


とかわしたが、奴はあっさり引き下がる玉ではない。


「ふ~ん、じゃあ菊野さんをデートに誘っちゃおうかな~」


わざとなのだろうか。

菊野、という名前を事ある毎に出して俺の反応を見ている様に見える。

森本は気のいい奴だが、何を考えているのか掴めない所がある。

まあ、奴も俺の事をそう思って居るのかも知れないが。


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