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愛しては、ならない
第37章 愛憎②


ドアが開いて、制服ではなくラフな首回りの開いたゆったりとしたシャツとGパンの森本が出迎えた。

いつもの華やかな笑みだが、鼻に絆創膏が貼ってある。昨日の祐樹の頭突きで傷になったのだろう。

それはまるでアクセサリーの様に彼をより魅力的に見せていて、何も知らない女性なら彼を『可愛い』と思うだろう。

でも私は見てしまったのだ。

彼の中にある……凶暴な獣を。

淫らな欲にたぎる目が私を捉えたあの瞬間の恐怖が身体をすくませ、足を踏み出すのが困難だった。

彼は玄関先で首を可愛らしいしぐさで傾げて笑うと、手を伸ばしてバッグを握り締める私の手を掴んだ。



「――きゃ……」



思わず声を上げてしまった私の口を掌で塞ぎ、人差し指を自分の唇の前に立てる。



「……ドアを閉める前に大きな声を出すと……廻りに聞こえちゃうよ」


「……っ」

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