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愛しては、ならない
第38章 愛憎③


菊野は何も言葉を発さずに俺を大きく開いた目で見詰め、唇を震わせた。

その表情は昨日までの物と何処か違うように見えて、俺は思わず強く手を握り締める。


「……い……たい」


菊野は眉を寄せて首を振った。



「菊野――」



俺が口を開いた時、カタカタと鍋の蓋が音を立て、溢れる寸前なのに気付き、彼女を離さないままでスイッチを切る。



「あ……ありがとう」



彼女は、呆然としたままで小さく言った。



「危ないじゃないですか……気を付けないと」


「……うん……ごめんなさい……」


下を向き唇を噛む彼女が堪らなく可愛くて、俺は強引に彼女を胸に抱き寄せた。



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