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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
彼が今まで抱いた女達は、最初こそ抗うが、言葉だけの事だった。
甘い囁きと、少しの脅し、そして彼が悲しげな表情を作り愛を乞うようにすると、忽ち女達は目も身体も蕩けさせて彼の浸入を許した。
長いものには巻かれる、ではないが、ずっと拒み続けるよりも諦めて身を委ねる方が容易い。
そして、一度踏み越えてしまうとあとは歯止めが効かないのだ。
菊野もそうなるに違いないと思っていたのに――
彼女は、もしも彼が刃物を突きつけて関係を迫っても、拒むのではないだろうか?
理屈ではなく、感情の拒否反応が身体に顕れていた彼女のことだから、頑なに守るのだろう。
なら、何故自ら森本の手の中へと堕ちようとしたのか。
それは、剛の為だから。
彼を守る為に、自分を差し出そうとしたのかも知れない。