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セルフヌード
第5章 少女と被虐

* * * * * * *

 天真爛漫な友人は、なつみに天気の話でもしている調子で、職場の憂いごとを打ち明けた。


「誰に?」

「──……」



 蜜色の街を機械的な人波が流れてゆく。


 夕まぐれのカフェ。

 日頃はインスピレーションの畑になる窓の眺めも、今日に限って白々しい。


「……いっか。警察にはちゃんと話そ」

「話せない」

「りの」

「簡単に訴えられる人間じゃないの。それに、表沙汰になったら、……」


 ほとんど水位の下がっていないグラスに浮かんだ氷が、微かな音を立てて崩れた。


「湿っぽくしちゃってごめんね。どうこうして欲しいんじゃないの。だから、ストレス溜まってて、なつみとぱーっと話したいなって。職場ってそういうのあるじゃない、人間トラブル。この際だから、なつみもぶっちゃけちゃえっ。何でも訊くよ?」

「りの、犯罪だよ。真剣に言ってるの。誤魔化したり、おかしいこと言うやつがいたら証人になるから。りのは何もしてない上司に言いがかりつけるような子じゃない。訴えたくないなら、今すぐ仕事やめて。子供が好きなら次の職場が見つかるまで、私、スタッフの仕事で良かったら繋ぎ紹介するから」

「……ありがと。でも……本当、ごめん」

「──……」
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