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セルフヌード
第5章 少女と被虐

* * * * * * *



 生前、少女の母親は女に甲斐甲斐しく構いつけていた。

 女は自分をいつまでも子供のように扱う姉を疎ましがった。




 睦ましやかな二人の姉妹は、姉の死を機に離別した。



 女の慈愛は少女の悲しみを慰めた。

 実母の教えは少女に根づき、入眼した。
 少女は周囲のものたちを愛し、周囲は少女を愛した。



(お嬢さんを見ていると、やっぱりあの人の面影があるわ)

(住田さんの奥さんも、あの子が実の娘さんでなくて残念だったでしょうよ。もっとも、あの人に子供がお出来になっていたとしても、あすこまで優秀なお嬢さんにはならなかったでしょうけれど)

(ここだけの話、旦那さん浮気されてたんでしょう?…………)




 女は手のひらを返したように、少女を痛恨の捌け口にした。

 少女が十八歳を迎えたある時、女は少女を呼びつけた。


 …──貴女、本当にお姉ちゃんに似ているわ。叔母さんね、お姉ちゃんにしてみたかったことがあるのよ。



 善良な母親の教えに従い生きた少女は、疑いという概念を持ち合わせていなかった。

 少女は女に従って、無垢な裸体を差し出した。
 タンポンも知らなかった少女の窪みは、女の指が油を塗り、怪物のような玩具が貫いた。


 女は姉の罪を少女に教えた。
 姉の罪が清算される方法を説いた。


 少女は女に従って、裸体を縄の羈束に委ねた。
 女は良人に姉との情事を語らせた。女の鞭が少女の皮膚をなぶり、少女の悲鳴が実父に自涜を促した。真新しい剃刀が少女の皮膚に十字を刻んだ。



 女の姉への願望は、女の痛苦に比例した。


 少女は女に従って、裸体で深夜のコンビニエンスストアへ出掛けた。
 「調教中」──…そうしたプレートを首に提げ、猥褻な雑誌の購入を命じられたような深夜の奴隷の来店は、店員達の眠気を覚ました。


 やがて女は姉を悪魔と呼ぶようになった。悪魔が逝去したのは天罰。


 少女は、悪魔の拭いきれなかった罪を背負った災いだった。…………
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