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セルフヌード
第5章 少女と被虐



 世界は美しいものから出来ている。

 あまねく可視の風景も、五感にまとう感覚も、なつみの母親譲りの顔も。


 ただ美しいだけの現実だった。ただ美しいだけの現実に、少しは信じられる人を見つけた。


 なつみのなくしたものを、初めから備わらなかったものを、美優は当たり前に持っていた。


 人は自分に欠けたものを補わんと、人を愛する。なつみの顔を憎んだ美優は、元から欠けてなどいなかった。


 なつみが美優に与えたものは、酷愛。愛をしのぐ酷い愛。


 なつみは、深い折り目のついた手紙に目を通した。

 予感が、胸裏で──……



「それ、……」

「母からの手紙でした」

「──……」

「これは、何だか分かりません」


 ムーンストーンの指輪がなつみの手のひらを冷やす。

 最後に握った母親の指も、これくらいの体温だった。



 世界を美しいと信じた女。自身の美に酔い、娘の美を賞賛し、フィリアを妄信した女。





 女が、…………なつみの母親が最初に身篭ったのは、義弟のレイプからだった。
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