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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
「通嗣は帝が成人した今も関白となって、政治を欲しいままにしている」
 確信めいた口調の後で、慌てて彼は取って付けたように言う。
「少なくとも、俺はそう聞いたぞ」
 薫子は微笑んだ。
「そうね。だから、お若い帝の耳に入れば外聞の悪い地方からの報告は関白さまのところでもみ消されてしまうという噂があるのも確かだわ」
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