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私は犬
第3章 【第1章】帰国
8歳から過ごした寄宿舎のあるローザンヌでは、魚といえばサーモンかレマン湖産の白身魚ばかりで、大学時代を過ごしたイギリスでも似たようなものだった


限界に挑んだかのように、パッサパサになるまで加熱された魚料理が供される事も、決して珍しくはなく


日本で口にしたような、美味しい生のお魚など、ここでは無いに等しいのだと。日本で刷り込まれた常識を切り替えるまでは、驚きっぱなしだった


今日からは美味しいお魚に困らない生活になるのね。と考える。


それはそれで、嬉しい事かもしれないわ。


不安もたくさんあるけれど、心配してみても始まらないもの。


楽しみをたくさん見つけて、自分の生活を良くしなきゃ。うん。



「でね、真子ちゃん、〜がね、〜なのよ」


おば様の声にハッとする。あぁ、また聞き逃してしまったんだわ。どうしましょう……。





こうして、何とか会話を繋げながら車内で時間を過ごしているうちに、やっとおば様のご自宅へたどり着いた



豪奢な門が重たそうな音をたてて開かれると、車は静かに滑り込み、やがて重厚な玄関の前に停止する


運転手さんがドアを開けて下さって、車外に降り立つと「お帰りなさいませ」と知らない方の出迎えを受けた。


新しい方かしら?と思いながら「ありがとう」とお礼を述べて、玄関をくぐる
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