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私は犬
第3章 【第1章】帰国
後見人でもあり、お母さまに託されたという、私が受益者になっている信託財産の受託者でもあるおば様に、ずっとずっと言えずにいたその計画とは


おば様の旦那様の康徳(やすのり)おじ様とは全く関係のない普通の会社に就職して、


日本での大卒の初任給の平均といわれる金額の、3割程度の住いを見つけて居を構える。

という、ごくありふれたものだけれど。在学中に苦心しながらネットを駆使して調べあげた、私にとっては凄い価値のある自立への第一歩だった



おじ様と関係の無い会社を選ぶのは、おじ様達にご迷惑を掛けないためでもあるし。縁故採用という、ちょっとズルい行為から漂う後ろめたさから逃れるため。


本当は他にも理由があるのだけれど。惨めになるからそれを考えたくはない


幸い、今はまだ10月で。今さら遅いかもしれないけれど、頑張れば雇って下さる会社が1つくらいなら見付かりそうな気がする


最悪の場合、イギリスに戻ったっていいんだし。スイスに戻るのも悪くはない。フランスだってある


その場合は、信託財産から大学院の学費を頂いて、もう一度学び直す必要があるだろう。不足分があれば奨学金で補てんしなくてはならない。

凄く大変そうだけれども怯んでいる場合ではない


学歴があって、言葉が話せれば何処でも生きてゆけるとお母さまも仰っていた。
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