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私は犬
第22章 新しい人
ふむふむ。この上に、あそこに掛かっている白いジャケットを着るのね。形が微妙に斬新だけど……。

お靴は……。そうよ、剛ちゃんの一番の問題点はお靴なのよっ!チラリと目をやると、先っぽが銀色の派手なスニーカーだった…………。なぜ先っぽだけ……。鏡面仕上げの銀色…。

「やっぱり、あんた、赤が似合うわぁ〜。そのワンピ脱いじゃ駄目よっ。それしか服無いから。着てたのはクリーニングに出したわ。諦めなさい!」

「………。」
この手際の良さ…。やっぱり強敵ね。

「はい出来た。可愛い〜っ。わたし天才っ!」

はいはい。あなたは間違いなく天災です…。私の試練です。

待ち合わせ場所に向かうと、おば様は既にいらしていて。お待たせした謝罪を述べながら歌劇場へ向かった。

中央のボックス席に、ゆったりと腰を落ち着けながら開演を待つ。おば様は剛ちゃんと楽しそうにお話をしているから、私がお相手しなくても大丈夫ね。

《椿姫》の題目で知られる、このヴェルディのラ・トラヴィアータ。本当は、椿夫人。正確には《道を踏み外した女》って意味なのに、何で邦題がお姫様になったの?どうにも解せない…。
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