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私は犬
第29章 諦めろ*
恐る恐る着けてみると、きちんとホールドしている方が痛みが少ない事が判明した。でも、なんかカップが窮屈に感じる…。おっぱい熱を持っているし、単に腫れているだけだと思うけど。そんな理由でもちょっぴり嬉しい。

服は、悩みに悩んで、剛ちゃんが珍しくプライベート用にと揃えてくれた、前ボタンの、白黒のブロックチェックのミモレ丈のワンピにした。

『ヴァネッサ・ハジェンズも着てた、ドルガバのワンピよっ!50'ぽくてレトロ可愛いわっ!』と、鼻を膨らませて説明してたから、素敵なワンピなんだろうと思う。靴は尚紅に貰った赤のフラットなやつにしよう。やっぱり白?いや黒?黄色も…。悩み出すと止まらないから赤でいいや。ブリジット・バルドーみたいで可愛いし。


リビングに行くと、着替えを済ませた有史さんが居た。緑色のチェックのシャツに白いチノ。こうして、改めて見るとやっぱり子供みたい。童顔なのかな?

外は梅雨の晴れ間っていう言葉がぴったりだった。通勤とバレエ教室へ行く道しか、歩いた事はなくて。マンションを少し離れただけなのに、路地に入ると一般住宅が沢山並んでいた。

「この辺、良く知っているの?」

「良くって程じゃないけど、知ってるな。帰国して、あのマンションが建つまでは暮らしてたし。」
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