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私は犬
第29章 諦めろ*
部屋に戻って考えた。聞きたい事は山ほどある。おばあ様、追分け団子が好きだったの?とか、御命日近いの?とか。どんな方だったの?とか。日本に他に親族は?とか……。

家族がだぁれも居ないって、寂しいね…。って言葉が、喉の奥に突っ掛かって苦しい。

言ったら駄目だ。これは言ってはいけない言葉だ。私は、本人から事情を聞かされて居ないのだから。

本当に言いたい事を、お腹の中に閉じ込めたまま。この人は、この先の人生も生きて行くのだろうと。そう思った。

それは、私も似たようなものだわ……。

簡単な夕食を終えてお風呂に入ると、またおっぱいに薬を塗ってくれた。冷したおかげか、だいぶ楽にはなったけれど、一面に散った赤や青の歯の形の打撲痕は、そのままだ。

無駄に大きなベッドに潜ると、有史さんは髪を優しく撫でてくれた。今日はこのまま、セックスしないのかもしれない。

胸さえ触らなければ大丈夫なのに…。という考えが頭に浮かんで、自分でビックリした。

私、こんな状態なのにセックスしたいと思ってる…。昨夜、あんなに酷くされたのに、全然懲りてない…。これって、頭が壊れてしまったのかもしれない。

あの日言われた《諦めろ》って、頭が壊れたら、2度と元には戻らないから諦めろ。という意味かしら?
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