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私は犬
第31章 私の事情②
「いいえ。あまり高いと経理から注意されるので…。その茶葉は玉露の雁ヶ音です。」

以前、普通にお茶を買って領収書を出したら、経理の偉い方に呼び出されて厳重に注意された。軽く20分は注意されたと思う。それ以来、指示された金額内の茶葉を購入している。

「鮎川さん、参っちゃうでしょ。彼女、悪い人じゃないんだけど、我が強いのよ。適当に頑張ってね。ごちそうさま。」

横川さんはお礼を言って下さって、給湯室から出て行った。些細な事だけどちょっと嬉しい。横川さん位の年齢になると、余裕が出るのだろうか…。

噂だと40代らしい横川さんは、このフロアで他の営業の方のサポートをしている。お互いの場所はフロアの端と端だけど、自分に関係ない人の様子も、きちんと見ているなんて。ちょっと凄い。

片付けを済ませて席に戻ると、早速鮎川さんに怒られた。

「いつまでお茶淹れてんのっ!早く仕事に戻ってっ。」

「すみません…。」

はぁぁ〜。また何かトラブルでもあったのかな?税関から連絡受けてから、余計に機嫌が悪い気がする。有史さん、早く帰って来てよ…。

退勤後、剛ちゃんの待つホテルに向かって慌てて支度を変えた。こういうの久しぶりだけど、今日のもう1つのお仕事は何だっけ?
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