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私は犬
第32章 我慢の限界*
「おば様、お昼はご一緒しましょ?ね?」

「身体中調べられて、勝手に歯の治療までされたのよっ。あの子ったら親を何だと思っているのかしら。育てかた間違えたわ……。」

駄目だ…。今はお話通じないみたい…。この際だから身体の悪い所、全部まとめて治療するのね。こりゃ大変だ…。

「お食事にしましょうよ。私、お腹空いちゃった。」

何とか3階の食堂まで連れ出して、席に座らせる事に成功した。食堂は病院というよりレストラン。一般の方も利用できて、テーブルの上には美しく飾り折りされたナフキンが、お行儀良く並んでいた。

お食事は、普通食と管理食の2種類から選べるのね。私とおば様が頼むのは管理食。

この世界的に有名なクリニックの療養食の味を、きちんと覚えて帰るのも私のお仕事。面倒だけど、仕事だと言われてしまえば断れない。メモや写真も欠かせないから次からはお部屋でいただこう…。

供されたのは、油を使わない蒸したオムレツ。白身魚のポワレ。プルーンとベリーの盛り合わせ。どれもシンプルながらお味はしっかりしていて、ミシュランガイドに掲載されているレストランにひけを取らない。

メニューを考える人だけじゃなくて、作る方にも緻密な計算や特別な知識が必要かもしれないと思った。
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