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私は犬
第32章 我慢の限界*
19世紀の面影を色濃く残したクリニックの建物を後にして、横田さんの運転で別荘に戻ると、剛ちゃんが出迎えてくれた。

「お帰りハニー!全身引き締まって、お肌もプルプルのうるうるじゃないっ。羨ましいわ、私もそこに入院したいっ。」

「どなたでも入院できるわよ。来年、剛ちゃんも一緒に検査する?」

「……あんたって本当に、意地悪よね…。」

怖い顔しながらそんな事言って…。何が意地悪なんだろう?というか、私、剛ちゃんの特別な蜂蜜になった覚えは無いわよ。

「剛ちゃんは、今日は何をしてたの?」

「わたし、今日はお買い物して、ドイツの郵便局に行ってきたの。疲れたわ〜。」

ドイツから荷物を発送したのね。昔、春木さんが、スイスから送るよりかなり安くつくと言ってたっけ。

「お疲れさま。良いお買い物出来た?」

「マルベリーのお洋服でしょ、アレキサンダーマックイーンのドレスでしょ、それから…。」

剛ちゃんは、次々とブランド名を挙げていくけど、聞いていてもさっぱり分かんない…。

「主に秋冬物ね。はぁー。楽しかったわぁ…。」


ふーん。楽しめて良かったわね。私も楽しみたかった…。せめて、イタリアかウィーンでオペラの1つでも観たかった…。

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