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私は犬
第33章 さよなら
翌日、春木さんに見送られて、ブリュッセル空港から成田行きの便に乗り込んだ。席に着くなり剛ちゃんの歓声が轟く。

「あぁぁ、日本よっ。日本っ!懐かしい匂いがするわっ。ちょっとあんたも、もっと感動しなさいよっ。」

日本の旅客機に乗っただけで、ここまで感動できる、その感性が羨ましい。それに、航空会社は日本だけど、ここはまだベルギー。日本じゃない。

「シーっ皆様にご迷惑よ。黙って。」

これじゃ、どちらが大人か分からない…。

「昨夜のグランプラス、美しかったわねぇ…。わたし夜のブリュッセルを、初めて歩いた気がしたわ。」

「そうね。毎回、パリやロンドンへの中継で、立ち寄るばかりだったものね。」

「わたし、ベルギーに住みたいわ…。はぁ〜っ。ムール貝美味しかった…。」

日本の旅客機見て、懐かしい、やっと帰れる。と大騒ぎした口が、2分後にはベルギーに住みたいと言っている。人って不思議…。

「機内食、和食、食べられるといいね。」

滞在中、剛ちゃんはちゃんとした味噌汁飲みたいと喚き散らし、インスタントの蜆のお味噌汁を工夫して食卓にのぼらせていた。本物を口にできれば嬉しいだろう。

「はぁぁ〜。パリのカフェの珈琲が懐かしい…。」

ちょっと!この人、本物の味噌汁飲みたいんじゃ無かったの?今さら何で珈琲なのよっ。しかもパリ?無い物ねだりばかりして…。

こういうの、諺で何て言うんだっけ?隣の芝生はよく柿喰う客だ?テュルフがオールウェイで…ハルディンon垣根が…アッズーロ。駄目だ…コプフの中で言葉がぐちゃぐちゃになってきた…。
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