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私は犬
第33章 さよなら
ロルフが居なくなって、お爺ちゃんが居なくなって、お婆ちゃんも居なくなった…。

「ロルフはどんな犬だったんだ?」

いつも背中を向けて寝ていた筈が、気付けば、有史さんの胸に顔を埋めるかのような体勢に変わってしまって。背中をトントンと優しく叩かれている。

「牧羊犬のバーニーズ知ってる?あれに似た大きな犬だった。綺麗にしてあげても、何故かすぐに汚れるの…。」

有史さんは、背中をトントンしながら黙って私の言葉に耳を傾け、相槌を打った。

「お爺ちゃんったら酷いの。冬になるとロルフにワインを飲ませるのよ。それに、いつも荷物を持たせて外出先から1人で帰らせるし。一度、背中にパンを担がされて帰って来た事もあるの。軽くて白いヤツじゃなくて、重たい黒パンを大量に…。」

トントンされている背中が気持ちいい。

「ロルフもロルフよ…。何でも担がされて運んできちゃうんだから…。林檎や新聞や雑誌まで。お人好しすぎるわ…。」

「そいつさ、爺さんやお前達の事が、よっぽど好きだったんだな…。じゃなきゃ、飼い主の爺さん置いて1人で家に帰らねぇって…。」

「爺さんに仕事任されて、好きな家族の為に運んでたんだろうな…。みんなの役に立ちたかったんじゃねぇの?」

そうなの…?1人で帰って来た事を怒られてばかりで、褒められた事なんかなかったのに…。怒られに帰って来ていたようなものだったのに…。
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