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人魚姫の唄声
第1章 人魚姫。
「はじめまして。佐伯拓海です。」

 その人は姉の婚約者。

 来年年明けに結婚式を挙げるらしい。
 私の犠牲の上の幸せ。

 私は言葉を話せないので、手話で挨拶をする。

「碧ちゃんだよね?栞からいつも話を聞いてるよ。」

 拓海はニコニコしながら握手を求める。私はそっと手を出し握る。
 その手は大きく、私の手を包み込む。

「確か、もうすぐ誕生日で二十歳なんだよね?成人式はどんな着物を着るの?」

 姉の栞はキッチンに向かい、お茶の用意をする。
 私はソファから立ち上がり、隣の和室の襖を開ける。
 正面には明るい青を基調とした、淡い桃色や黄色の牡丹の花をあしらった晴れ着を見せる。

「綺麗だね。」

 拓海は一歩和室に踏み込み、右側を見る。
 そこには小さな仏壇がある。

「…お父さんとお母さん、だね?」

 私は頷く。

「御線香、あげてもいいかな?」

 仏壇の側に行き、ロウソクを灯す。 拓海に座布団を譲り、私は斜め後ろに座る。
 線香をつけて、手をあわせる。
 その後ろ姿をみつめる。

 
 二年前。

 高校三年生の冬、大学受験の為に遅くまで部屋にこもり勉強をしていた。
 父と母はすでに就寝している。
 姉の栞は当時、看護師として病院にいて不在だった。

 一軒家に思わぬ侵入者があった。

 風呂場の窓が割られ、一人の男が侵入し就寝中の父と母を殺害した。
 私は異変を感じ、声を潜めとっさに持ったケータイを握りクローゼットに隠れた。
 あまりの恐怖に警察に連絡したものの、声が出ず身体を震わせるだけだった。

 その男は私の部屋に入り、何かを探し始めた。

「栞!!栞はどこだ?!」

 姉の名前を呼び、ベッドや机を荒らす。
 この部屋は先日まで姉の部屋だった。
 受験勉強に専念するため、日当たりの良い姉の部屋に替えてもらったばかりだった。

 潜むクローゼットを開けられ、見つかり腕を掴まれ引きずり出される。
 そのまま、男は馬乗りになり私の身体は床に押さえつけられ部屋着を切り裂かれる。
 露わになった肌に男がすがる。

「栞…栞…捨てないでくれ。」

 私は栞じゃない。
 声を出そうにも、出ない。
 
 よく見ると、男の身体は血まみれで右手にはサバイバルナイフを持っていた。
 それを私に振りかざした瞬間、警察官が数人飛び込んできた。

 
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