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陽炎ーカゲロウー
第1章 邂逅
右の半顔が醜く焼け崩れ、髪も額の上あたりは、半分焼けてチリチリと頭に貼り付いている。

右目は辛うじて、見えてはいるが、瞼が焼けて一部ひっついているので、しっかりと開くことはできなかった。


そして、そんな顔の女は、
人から『化物』と呼ばれていた。



この顔を見て、驚かないものなど、今までいなかった。


だから。

顔を、見られた時の、大抵の反応には耐性ができている。


驚いて腰を抜かす、か。
泡を食って逃げる、か。
大声で叫ばれる、か。
中には、驚きのあまり咄嗟に殴る蹴るなどしてくる者もいた。

距離を取ってから、石などをなげてくる者は多かった。

だが、男の反応は、女が今まで見たことのないものだった。


「怖く、ないのか…?」

恐る恐る、聞いてみる。


男はあン?と眉をひそめ、
そのまま噴き出した。

「その顔がか?火傷が怖くて盗賊稼業が勤まるかよ。
それに….傷なら俺にもあらぁな」

そう言うと、男は顎をしゃくって自らの顔を見せた。

男の顔には、右目の下から顎にかけて、大きな鉤裂きのような傷があった。

女は、そこで初めて、男の顔をまじまじと見た。



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