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恋はどこからやってくる?
第3章 柏木の事情
定時を過ぎ、安田に見つからないよう退社しようと急ぎ足でエントランスを縦断する柏木に、声をかけてきた女子社員がいた。

「あ、あのぅ、柏木さん」

見たことがあるようなないような相手だなと、怪訝な目を向ける柏木に、女子社員は少しうつむいて

「私…経理二課の鈴木です」

おずおずと近づいてきた。

「ああ、お疲れ様です」

──安田のやつが余計なことを言ったんだろうか

「あの…今日はもう上がりですか?」

小柄で色白、こじんまりとまとまった顔立ちは、派手さはないが可憐な印象だ。合コンの席にいれば、狙うやつもそこそこいるだろう。

けれども柏木にとってはただの女子社員にしか見えない。

「ああ、うん。でもこれからちょっと用事があるんだ」

面倒な展開にならぬよう、先手を打って返事をする柏木に、鈴木のこじんまりとした顔がシュンとしぼむのが分かった。



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