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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第111章 坂の上から
記憶が巻き戻され
時間が遡ってゆく
そう あれはいつだったろうか
坂を見晴るかせるあの場所に佇み
自分より はるか年上の高校生たちをそっと眺めたのは
坂道のふもとで
いつも学校帰りにデートしていたカップルがいた
男子学生は自転車を押し その傍らに寄り添うように女の子が立っていた
何がおかしいのか 二人はひそひそ声で囁き合ってはクスクスと笑い合っていた
彼等が時折 交わす意味ありげな視線に
私はドキリとして 見てはならない大人の世界をのぞき見したような気分になったものだ
当時 私は小学生低学年
やがて何年か経ち
年上のお兄さんお姉さんは いつしか坂道を通ることはなくなった

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