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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第129章 高校最後のお弁当
憶えているかしら
三年前 薄紅色の桜の花びらが舞う中
母子(おやこ)で歓びに溢れ
高校の入学式に行ったこと
まだまだ先だと思っていたのに
あっという間に卒業の日が近くなったね
たいしたご馳走も作ってあげられなかったのに
―三年間、ありがとう、美味しかったよ。
ひと言いってくれて
涙が止まらなかった
今朝 残り二日となったお弁当を作りながら
そういえば 
この台所で赤ちゃんだった息子の離乳食を作り食べさせたんだと
大昔のことまで思い出した
今はもう調理のときにしか使っていない台所で
かつては家族が揃って賑やかに食事をしていた
古い台所には
幼い頃の息子が座っていた赤ちゃん用の椅子もまだ置いてある
今は使う人もいない小さな椅子にそっと手を伸ばして触れた時
熱い塊がこみ上げた

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