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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第130章 桜幻想(エッセイ)
 静かな時間がひたすら自分の側を流れていった。今から思えば、何という贅沢な時間であったのかと思う。
―桜の下には死体が埋まっている。
 そんな文章を知ったのも、多分、その頃だ。当時、愛読していた小説に書かれていたのではないか。相部屋のルームメイトが寝静まった夜更け、窓を開ければ、宵闇に沈み込んだ桜が見渡せる。漆黒の闇の中で桜が咲いている場所だけが細い月明かりを浴びて、雲母(きらら)のように淡く発光しているように見えた。
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