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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第138章 簾越の艶(つや)
私が物心ついたときには
庭はもうガクアジサイに占拠されていた
毎年 初夏になると
洗面所から覗く紫陽花が少しずつ色づいてゆくのを見るのがひそかな愉しみになっていた
殊に 百均で買った小さな簾を窓にかけてからは
見えそうで見えない紫陽花の艶(えん)な美しさは
烈しい夕立の上がった夕刻
臈長けた女性が風呂上がりの素肌にしっとりと浴衣を纏ったかのような風情がある
あからさまではないけれど
おのずと滲み出るそこはかとなき色香
清潔な艶っぽさを感じる
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