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陽炎 ー第二夜ー
第2章 勝負師
忙しいのだろうに、合間に

「お茶、お代わりいるかい?」

と聞きに来てくれる。

「ありがとう。お願い。」

俺は思い切って聞いてみた。

「ねぇ、るいさん」

「あれ、あたし名前言ったっけ?」

「みんながそう呼んでるから。違うの?」

「違わないよ。あたしの名はるいだ。」

「るいさん、家は近いの?」

「この裏だけど、なんで?」

「所帯持ってる?」

「いいや、一人だよ?」

「じゃ、決まった人はいるの?」

「何だよ薮から棒に。いないけどそれがどうしたの?」

「じゃ、今晩泊めて?」

「はぁっ?」

きっとすごく驚いだんだろう。二の句が継げずにいるるいさんに、俺はニィっと笑う。

「お願い」

世話好きな女は、結構コレで、しょうがないねぇ、なんて落ちてくれるもんなんだけど。

るいさんは冷めた声で。

「なんであたしが初対面の男を家にあげなきゃいけないのさ」

と言った。失敗か…

「ごめん、忘れて?お愛想。あ、飯美味かったよ。ごっそさん」

ダメで元々の交渉だから、食い下がりはしない。
ありったけの小銭を卓に置き、俺は店を出た。
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