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陽炎 ー第二夜ー
第2章 勝負師
「なぁ、兵衛。壺ってさ、何で出来てる?」

横の兵衛に小声で聞いた。

「ん?木か…いや、竹か…なんせ細い物で編んだ籠というか、ザルのようじゃの。目の間に微かに黒いものも見えるようなから、内側に布を貼ってあるのかもしれん。大丈夫か?アレでも音は聞こえておるのか?」

やっぱりか…

「ちゃんと最初の目教えろよ。」

「おぉ、すまなんだ。」

次が聞こえなかったら、もう勘で行くしかねぇけど、もう一回だけ、集中してみるか。
二回目の勝負が始まった。
最初と同じ、始まりの合図。
兵衛は座った俺の膝を、三本の指で二回、二本の指で一回軽く叩いた。

六と二ってことか。
やっぱり、ゴザを滑るザルの音の方が大きく、転がる賽の音を掻き消す。
どっちに何回転がったか、判別しづらい。
でも、俺は出目を二と五と読んだ。
半。
俺は目を開けたまま、瞬きをしなかった。すまねぇ兵衛。一両スッたらいつか返す…たぶん。

兵衛が半と張る。

「勝負」

ややあって。

「グニの半」

グニってのが何か分からなかったけど、半であることは確かなようだ。
当たった。
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