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陽炎 ー第二夜ー
第2章 勝負師
店の前に籠をつけて、裏手の家に回ると、
るいさんが、駆け寄ってきた。

「鷺!」

「ただいま、るいさん。寒いのに、待っててくれたの、風邪ひくよ?」

「遅いから、心配したの。もう、帰って来ないんじゃないかと思って…」

「何言ってんだよ。帰ってくるって言ったろ?信じてよ。」

るいさんは鼻をすすりながら、俺に抱きついて来る。
ちょっとよろめいたけど、何とか踏ん張る。

るいさんによっこらせ、と銭を渡す。

「どうしたの?このお金」

「当面の生活費。心配しなくても、昔の仲間と、ちょっと賭場で遊んだだけだよ。もう行かないから大丈夫。」

るいさんはまだ何か言いたそうだったけど、はぁっと息を吐き、俺の胸をひとつ拳で叩いただけだった。

「本当に、何処にも行かない?」

「うん。出て行けって言われたって居座ってやるから覚悟しな?」

そう言ってるいさんの頭を抱き寄せる。


ねぇ、市サン。

俺、全部掛けられるオンナ、

見つけたよ。



ー了ー
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