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弓月 舞 after story 集
第7章 君の視線が絡み付く



「…なら、イイや」


何がいったい、イイのだろう。

検討も付かず盗み見た彼の顔は──微笑んでいた。

いつもの意地悪な笑顔に似ているけれど、少しだけ違う。

何故だが……今だけは純粋な優しさを感じる淡い笑顔をしていて、なのに、目だけはいつも以上に生き生きとしている。

夏休みだからと明るく染めている髪の隙間から、ひどく熱っぽい瞳が私を見据えている気がした。

私のほっぺに触れていた指は、まるでその温度を確かめるかのようにゆっくりと涙を拭って……離れた。

「泣かせてごめんね?映画見るのは後にするから許してよ」

「…っ…ほ、んと…?」

「うん」

「………あ、あの…でも」

「ほら、間違えたとこの解説してくれるんでしょ?……センセ」

「わかったけど…っ、その、手を離してくれないと…」

「ああ…ごめん」

私に言われてユウキくんがぱっと手を開く。

彼は両肘をテーブルに投げ出すと、腕に頭をもたれさせ、上目遣いでこちらを見上げた。


「……//」


私は涙を流しながら息を呑んだ。


首をひねって脱力した彼の姿勢は、真面目とはほど遠い色気の塊──。

女の子みたいに色白で綺麗な顔立ちのくせに、ノースリーブの袖口から隆起した肩の筋肉が男らしい。

加えて、この目だ。

ギラついた目……。すごく、すごく危険な目。

彼が何故泣いている私にこんな視線を向けてくるのか、まるでわからない。

わからないけれど…胸の奥が熱くなる。

とても怖いのに惹きつけられる。

どうしてそんなふうに……!?

「じ……じゃあ、…さっきの問題を…説明すると」

逃げるように参考書を開いて目をそらした私の声は、みっともないくらい上ずっていた。

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