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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
 
「お前は拙者を前にしても媚びず、出し抜こうと考える女だ。大人しく慰み者になる訳がない。振り回され、さぞやきもきしただろう」

 楽しむような秀吉の口調に、大海は苦い顔をする。実際秀吉の手のひらの上で転がされ、あちこちに迷惑を掛けたのだ。返す言葉はなかった。

「お前がここで生きる決意をしたなら、一つ頼みたい。自由に生きる道を探すのは構わぬ、それを見つけたら、侍女を辞める事も認めよう」

 侍女を辞める、それは子飼い達にとって、もっともおもうがままにならない結果である。秀吉が子飼い達に学ばせようとしているものが偽りではないのだと、大海は強く感じ取った。

「だがその間、子飼いの誰のものにもなるな。体を許しても、心は寄り添ってはならぬ。あやつらを立派な武士にしてやりたいのだ、手伝ってほしい」

「それで、あたしが道を見つけたら……小夜は、どうなりますか?」

「好きにしろ。あれは愛でる以外に使い道がない。無論本人が望むなら、いつまでも長浜で暮らせるよう都合するが」

「ではその言葉、しかと心に受け止めます。あたしが、あたしらしく生きるため何をすべきか、理解するその時までは――」
 
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