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第11章 苛立ちの半兵衛

　
　佐吉の徹底的に生真面目な性格は、性にもよく現れている。佐吉自身が他にない逸物という訳ではないのだが、激しさの中でも大海が狂う箇所を的確に突く。たまらず大海はかぶりを振るが、佐吉は責めるのをやめようとしなかった。

　そして、また重なる唇。佐吉は口吸いが好きなのか、幾度となく求めてくる。ただでさえ下を塞がれ息が追いつかないのに、上も塞がれてしまうと苦しいものがある。だが、それを凌駕する安心が、絡む舌から伝わっていた。

「ふ、ぅん……！」

　佐吉が口を離そうとすると、いつしか大海は逃がさないよう吸い付いていた。少し前、初対面の佐吉に敵意を剥き出しにした大海からは想像もつかない、放蕩に溺れる瞳がそこにある。佐吉は自身と共に、知らない間に作り替えられてしまった女の体に心臓を締め付けられた。

「んっ、ふ……くっ、んんっ!!」

　だが、覚える物悲しさも、快楽の濁流には敵わない。大海を救うため、合意の上とはいえ、結局佐吉は他の男と同じように大海を白濁に汚してしまう。いくら大海が満たされた顔をして絶頂を迎えても、佐吉には後悔が残った。