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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
 
 虎之助は深い溜め息を吐くと、隅に放り出されたかいまきを拾う。そしてそれを市松に投げると、しゃがみ込んだ。

「三日ばかり借りるって、すぐ皆が気付くとは思わなかったのか? 妹は志麻経由で誤魔化せばいいだろうが、紅天狗の一件であいつには見張りが付いてるんだぞ。すぐ俺の耳にも入るだろうが」

「それは……考えてなかった」

「まず、服を着ろ。俺は男の裸なんて、一秒だって見つめたくないぞ」

「いいや、俺は動かないぞ。お前の気が済むまで殴られなきゃ、一歩たりとも動けねえ。さあ、殴れ!」

「もう、腕が上がらねえよ。いいから、汚い一物をしまってくれ」

 市松はそれでもしばらくは大の字のままだったが、虎之助が動かないのを見ると上半身を起こす。そしてひとまず膝の上にかいまきをかけると、うなだれながら呟いた。

「まだ、足りねぇよ……」

「……殴られる前に、大海に謝れ。どんな理由があれ、あいつを道具みたいに扱ったのは最低だ。あいつはあれで結構繊細だ、気丈な振りはしても傷ついてる。それに、お前がまた酒に逃げた事も、悲しんでるさ」
 
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