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戦国ラブドール
第19章 愛憎
 
 大海は佐吉に全てを委ねるよう身を預け、歪みなく微笑む。それだけで、腹に蠢く黒い靄が一気に晴れた。

「……やめてくれ」

「佐吉……?」

「許すなんて言われたら、俺は自分を許してしまう。愛する資格も、愛される資格も、俺にはないんだ。こんな矛盾を、認める訳にはいかない!」

 信頼を寄せた体を、佐吉は戯れに汚す事しか出来ない。責任を取れない我が身が、佐吉はただひたすら憎かった。

「あんたを許すのは、あんたじゃない。自分一人で悩んでないで、相手に話しなよ。そう、あたしに教えてくれたのは、あんたじゃないか」

「俺が?」

「あたしが、小夜の件で自分を許せなかった時さ。可哀想な自分に浸って、自己嫌悪していれば謝罪した気になって気持ちいいだろうって……そんな事より、間違いを認め謝って改めるべきだって、あんたはあたしに言ったじゃないか」

「……俺は、そんな傲慢な事を言っていたのか」

「あんたらしくて、いいじゃないか。あたしはあそこでそう言われてなければ、ずっと自分に酔っていた。あんたの言葉は厳しいけど、正しいよ」
 
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