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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
 
 小夜を陵辱する動機がある者など、紅天狗くらいしか考えられない。だが、わざわざ二度侵入してくるとも考えられず、皆の胸には疑問が引っ掛かる。すると半兵衛が、難しい顔をして打ち明けた。

「小夜さんと言えば……実は昨日、暴行事件の手掛かりを探し、色々皆へ聞き込みをしたのですが、その中で気になる噂がありました」

 他人が好き勝手に、妹の噂を流している。大海は思わず身を乗り出そうとするが、それを読んだかのように吉継が繋いだ手に力を込めて止めた。

「小夜さんは、誰かと恋仲であり、逢い引きしているのではないかという噂です。大海が堺へ向かい、小夜さんが一人になった辺りから、彼女の様子が変わったとか」

 小夜の様子がおかしい、それは半兵衛だけでなく、大海や吉継も感じていた疑問である。大人しく心優しい娘であったはずの小夜が、習い事を簡単に投げ出し、烈火の如く怒る。吉継は他の誰にも打ち明けていないが、小夜に誘惑されたのだ。何かきっかけがなければ、そう変わるとは考えられなかった。

「もちろん噂など、不確かなものです。しかし、全く火のないところから噂が出るとも思えません」
 
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