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戦国ラブドール
第25章 赤壁の戦い③
 
 意思を薬に壊され、欲のみを果たす生き物に成り下がる。それはつまり、死と同義である。大海は力の限り暴れるが、赤月に腕を押さえられ、黒月に上に乗られては、逃げる事も出来なかった。

 黒月は包みを開くと、片手で大海の口を開かせる。迫り来る、白い粉。黒月は恐怖を煽るかのように、ゆっくりとそれを傾ける。

「あ、あっ……!」

 大海を大海でなくするものが、とうとう紙からこぼれ落ちようとした、その瞬間だった。

「大海っ!!」

 響いた叫び声に、黒月は思わず大海を押さえる手を離し振り向いてしまう。その勢いで粉は大海の顔に散らばり掛かるが、口は閉じられたため、最悪は避けられた。

 小屋を蹴破り、現れたのは吉継。黒月は赤月に大海を任せると、立ち上がった。

「お前は……」

「悪事も、ここまでだ。これ以上の狼藉は、僕が許さないよ」

「ちっ、もう追っ手が来たか」

「追っ手じゃない。初めから、僕達はお前を疑っていた」

「……なんだと?」

「君は僕達武士を手玉に取ったつもりで、手のひらの上で転がされてたって言ったんだ」
 
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