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禁断の果実に口づけを
第12章 週明けの女達
 
『洋子、女サボんなよ…』

伸介の言葉に感化されたかの様に、いつもより早めに起きて、丁寧な化粧と髪のブローを念入りにし、ドレッサーの中のスーツを選ぶ。

 襟元がフリルの白いブラウスと黒のスーツに着替えた。
姿見を見て、今日の仕事スタイルを映し、少しでもカッコイイ自分を魅せる為の努力を惜しまず、くまなくチェックする。
若い頃は、毎日こうして仕事に向かっていた。
いつから手抜きをしてサボっていたのか……
それは遠い記憶となっていた。

 女が輝くのは、やはり男という存在があり、いつも綺麗を保つ。
それは、がっかりさせたくない女心がそうさせるのではなかろうか?

 『今日も頑張ろう』と自分のモチベーションを維持出来る存在でもある。

 軽い朝食を取り、艶々なルージュを引いて、洋子は仕事に出掛けた。


 女というものは、変化に敏感な生き物。
営業所に入ると、『おはようございます』と挨拶を交わしながら、洋子の顔を見て、驚きの表情を隠せない営業所の輩達。
一瞬、違う生き物でも見る様な視線となる。  
しかし、気軽に『髪切ったんですか?』などと聞いてきて、コミュニケーションを取る者は居ない。
それくらい、洋子は自分が嫌われている事は自覚済み。

 白いお洒落なコートを羽織り、髪を綺麗に巻いて、自分のルックスを惹きたたせる化粧を施し、清楚に笑う白雪姫様だけは違った。
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