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禁断の果実に口づけを
第14章 勃発


 朋子のそんなセンチメンタルな気分も、外回りが終わり営業所に帰れば吹き飛ばされる。
現実は、毎月ノルマに追われて走り回る外交員の一人である朋子。
上を目指すなら、倍以上のノルマを自ら背負い、やり遂げる事で、今を生きる朋子の存在価値を見い出していった。

 朋子が自分のデスクに座ると、『おかえりなさい』と声を掛けた殆どの人が一日の業務日報をパソコンに打ち終わり、帰り支度をしていた。

 「あっ、朋ちゃんお帰り!
外、寒かったねー」
晴美は朋子の姿を見つけると、にこやかな笑顔で話し掛ける。

 「あっ、はい。只今戻りました」

 「お疲れ様でした。 
朋ちゃん、どうだった?風間さんの契約!?」

 「契約書、頂いてきました。
今から不備がないか、もう一度チェックしてから上げます」

 「はい。宜しくね。
今日は朋ちゃんの資産運用一千万の契約書が上がるから、私も鼻が高いわ」

 満面な笑みで朋子を褒める晴美。

 『いつも思うのよ…晴美さん。
どうして、貴女はそんなに寛大なのかって?
私なら、後から入ってきた後輩に成績で負けるなんてプライドが許さないわ。
確かに営業は波があるから毎月上手くいく、行かせるなんて不可能な事かもしれない。

 でもね、晴美さん…
私が晴美さんならそんな部下を余りいい気持ちで見れないわ。
だからこそ、人として貴女は出来た人だと思います。
ですが、ここは戦いの場。
成績という目に見えるもので評価で、給料や立ち位置が決まるんです。
貴女の上に立ちたいから、負けるわけにもいかないし、貴女を追い抜きます。
貴女が座る場所は、いずれ私の場所になるんですよ」

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