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第16章 砂の城

　「そうですか。
じゃあ、優美子さん良いお年を。
ハワイ楽しんできてくださいね」

　「あっ、有難う御座います。晴美さん。
晴美さんも良いお年を」



　ハァ！？ハァ？ハァ！！
何だそれ？
不倫人妻の逃避行を応援してあげてんのに、何？その他人事みたいに悠長な態度。
それにこの場に及んでハワイだと？
正真正銘の馬鹿女ね！！
これじゃあ、倉橋朋子に旦那を寝取られても仕方ないわね。
あんまりにもお馬鹿さん。
人に知恵を貸して貰っておきながら感謝もない。
しかも、上手く事を運んでやってるのに自分から動く努力もしない。

　風間優美子
ルックスだけで中身が空っぽな女ね。
脳みそが働かない分、常識、知識という年輪を刻めない女。
　

　すっかりしらけてしまった晴美。


　所詮、馬鹿な女は自分の足元の石ころにも気づけないで躓いて、大怪我すんのよ！

　晴美は憤慨する気持ちを和らげる為、タバコに火をつけた。
車内に舞う白い煙。
この煙に巻かれてうやむやにならぬ事を祈った。

　朋ちゃん、二人もいらないんだよ。
仕事が出来て、上に登りつめる女はね。
その道は細くて険しいの。
男に媚を売って登ってきたあなたなんかをこの先に上げるわけにはいかないのよ！
その為なら、汚い事にも手を貸すわよ。
あなたがしている事は、真っ当に働く女への侮辱なんだから！

　この先には絶対行かせない！