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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳
 

 「次のパーキングに寄りましょう…。
少し運転休んだら?
コーヒーでもご馳走するわね」

 「あぁ…」

 愛なんてそこになくとも、最期に掛ける情けはあった。

 パーキングに寄り、温かいコーヒーを買ってくる優美子。
健にコーヒー渡すと、『有難う』と礼を言って受け取った。
重苦しい雰囲気もなく、本来の二人の姿に徐々に戻っていった。


 「あなたと倉橋朋子は似てますね。
瞳の奥に野心を上手く隠して、利口に生きようとする。
嘘を上手く隠そうとするけど、本来の正直さがそれを邪魔するの。
嫌味なくらい負けず嫌い。
でも、詰めが甘いからボロを出す。
馬鹿ね…」

 「優美子…」

 「年が明けたら、弁護士を通して、離婚の条件を提示した書類を作成させます。
あなたは、それに異論がなければ判を押して下さい」

 コーヒーを飲みながら健は頷く。

 「なぁ、優美子。
一つだけ約束してくれないか?」

 「何?」

 「輝の事。
目標も目的もなく、ただ逃げたいだけの理由の留学は認めない。
学びたい事や経験したい事もなく、金を溝に捨てる様な事だけはさせたくない。
俺は最低な男だけど、汗水垂らして働いてきた事にだけは誇りを持てる。
働かなきゃ、金なんて手に入らない。
そういうのだけは分かる男に育って欲しい。
後は、父親を反面教師にして生きて、俺みたいには絶対なるなと伝えてくれ」

 フゥと溜息をつくように笑い、優美子は『分かったわ』と返事をした。


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