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禁断の果実に口づけを
第20章 道標

 ひとしきり泣いた後、部屋の電気を点けて暖房を入れた。
真雪の住むマンションは朋子の住む団地とは違い、ドアを締めれば隣に住んでいる人の気配すら感じないほど静かで、外はあんなに冷え込んでいたのに、寒さを感じないほどの断熱設備も整っていた。
デザイナーだけあって、センスの良い家具も置かれていて、整理整頓もキチンとされていた。
ピンクと白を基調とした部屋は、真雪の女心そのもの様に感じた。
出来る男。真雪の場合は女というべきなのか?
成功そのものが素敵な住居として形になった真雪の部屋は、朋子にはやや格調高く感じた。

 窓辺にある白いソファーに座り、ぼんやりと起こってしまった出来事を振り返る。

 健の無事を願った。
止まったはずの涙がまた溢れてゆく。


 そんな時にも思い出してしまうのは、健との甘い時間の回想だった。
高ぶる神経を少しでも鎮めたい気持ちがそうさせたていたのかもしれない…。

 健に初めて抱かれた日、亡くなった夫を裏切ってしまった気持ちでいっぱいになった。
それでも、女として素直に感じ、抱きしめられた肌の温もりに安心していった。
ギュッと抱きしめられる度にしがみつき、寂しさで飢えた心や身体が温まっていった。

 一線を越えて初めて健を自分の身体に受け入れた瞬間、女として心も身体も悦びに震えた。

 忘れていた温もりを再び取り戻し、むしゃぶりつくように求めていた。

 健の腕の中を離れたくなかった…。
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