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禁断の果実に口づけを
第9章 デキる女ー倉橋朋子の秘密


 この営業所に入ってから、常にトップの成績を残す倉橋朋子。
デキる女と言われる反面、デキる女というのは、女の世界では嫉妬というやっかみを生む原因にもなる。

 『デキる女は蹴落としたい』
 『デキる女の失態や失脚は大好物』

 これが裏女社会の法則でもある。


 「あっ、今日は一日、私は外です。
何件もアポを抱えてるんで、急用の時は携帯に連絡下さい!」

 朝礼が終わると、朋子はそう言い残し、颯爽に営業所を出て行く。

 「アポがあって忙しいっていいよねー」
出来ない女は、羨ましがるだけでそう嘆く。

 「じゃあ、倉橋さん見習って頑張ろう!」
出来る女は、表向きはそんな言葉と笑顔を上手く作る。

が、

 デキる女の中でも、心に邪を飼うストレート過ぎる性格の持ち主は、『フン!』と鼻息荒い裏の顔は断固として見せないが、内心は面白くない。


 みんな自分が可愛く、ノルマを背負わされて働いている女戦士に過ぎない。

 かと言って、負け戦ばかりにも出陣したくもない。

 運も実力とされるこの世界での戦いは、勝者であっても、味方からも欺かれる場合もしばしばある。

 デキる女の存在こそ、疎ましいと思う輩も存在するという事だ。

 デキる女は敵も多いという現実。

 『女って厄介よね……』

 『ホント、性格ブスの溜まり場!』

 川端伊織は言えない言葉を心で呟く。

 『最上級ブスもここなら平均値なのかもね。
でも、あのブス最近色気づいてるし〜
ウケるんですけど〜』

 チラッと洋子を見て笑いを堪えて下を向く。

 『ブス移らないうちに退散しょ!
今月はノルマ終わってるし、エステにでも行こう!
要は、仕事が終わってるなら文句ないでしょ!』

 カバンを持ち、「行って来ます!」と声を掛け、伊織も営業所を出た。
 



 


 
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