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優しい愛には棘がある
第2章 Moon crater affection







 いづるは月子と少年の目に届かない学舎内に場所を移すと、早々に嘘を打ち明けた。


 一限目は必修科目だ。

 二人揃って同じ講義室に入り、隣に座った。テキストやらノートやらの準備を進めながら、とりとめない話が始まった。

 だが、じきに例の話題に行き着いた。



「心配をかけて申し訳ないことをしたわ。紫倉さんって優しいんだね。あんな気まずいところを見て、引かないで、助けてくれようとしたんでしょ。有り難う」

「あの人は?」

「恋人。お姉ちゃんと専門演習のクラスが同じで、その関係で知り合ったんだ。見かけは怖いけど……、大好き」

「端見さんって、ストライクゾーンが広いんだ」

「理想は高い方だったよ」

「なら、今日みたいなのは珍しいだけ?見ていられなかったよ。喧嘩なら端見さんもやり返さなくちゃ」


 いづるは羽織っていたジャケットを膝にかけた。

 淡いコーラルピンクのそれは、エアコンの行き届いた講義室内では暑い。前身頃にレースを挟んだピンタックが施してあって、袖口とポケットに共布のリボンがあしらってあった。
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