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星の島で恋をした【完結】
第19章 《十九》
 ……こうやって思い出しても、理不尽なことしかなかった。

 いきなり乗っていた馬車を止められ、説明もなく連れ去られてしまった。

 だけどいくらカティヤ王女の護衛とはいえ、セルマの立場で公爵家の人間に文句を言うことはおろか、許可なく口を開くことは許されていなかった。



 痛む頭を押さえながらセルマはどうにか目を開けた。

 案の定、見覚えのない天井。ゆっくりと視線を動かすと、どうやら天蓋付きの寝台の上に寝かされているようだと気がついた。

 横を見ると斜が掛かっていて、その向こうはかなり広い空間があり遮光布が取り払われた窓からは明るい日差しが差し込んできていた。

 それを見て、今がすでにお昼を過ぎた頃ということが分かった。

 セルマが城門前に至ったとき、日が傾き始めていたので、かなり長い時間寝ていたことになる。セルマを連れ去るためになにか薬を使われたらしいことを差し引いても、眠りすぎのような気がする。



 それにしても、なにか考えようとしたらずきりと痛む頭をどうにかしたい。

 セルマは目を閉じて、指先で痛む場所を早く痛みが引くようにと願いながら押さえていたら、すーっと消えていくのが分かった。

 すっかり痛みも引き、セルマはほっと息を吐き出した。

 頭が痛いとなにも考えられない。

 動かしても大丈夫なことを確認して、セルマは身体を起こした。

 自分の身体を見下ろし、星の島を出るときに着ていた服のままであることにほっとした。

 それから寝台から抜け出そうとしたところ、部屋の外がかなりざわついていることに気がついた。

 確かめようと寝台を降りようとしたところで扉ががんと音を立てて開いた。



「早くセルマを返しなさいっ!」


 聞き覚えのある声にセルマは思わず息をのんだ。

 そして扉の向こうに立っている人物を見て、セルマは思わず目を見開いた。



「カティヤ王女……」


 そしてその向こうには忘れたくても忘れられないでいた人物までいた。

 公爵家の三男を後ろ手に縛り上げているその人物は、三男の黒に対して華やかな金色。

 だけどその身を包む空気は明らかに激怒していて、近寄るのも怖いくらいだ。
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