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星の島で恋をした【完結】
第21章 《二十一》
     *

 公爵家の敷地から少し離れた場所に止められていたカティヤ王女の馬車にセルマとリクハルド、そしてカティヤ王女と乗り込んだ。



「港に向かって」


 というカティヤ王女の言葉とともに馬車は動き出した。



 ちなみにリクハルドはセルマと再会してからこちら、セルマをぎゅっと抱きしめて離そうとしてくれない。抗ったらあの壁のように壊されてしまうかもしれないと思うとセルマは怖くて動けないでいた。



 しばらく馬車内は静かだったが、いつまでもセルマを離そうとしないリクハルドに呆れたカティヤ王女が口を開いた。



「リクハルド、セルマが苦しがってるわ」
「だからなんだ」
「だからなんだって……。もっとあなたは落ち着きのある人だと思っていたけど」


 ため息とともに出た言葉にリクハルドは反論した。



「これが落ち着いていられるか。どいつもこいつも俺からセルマを取り上げようとしやがって……!」
「取り上げるもなにも、あなた、自らセルマを手放したじゃないの」
「一度帰せと言ったのはそっちだろう」


 リクハルドのふてくされた声に、セルマは首を傾げた。

 星の島からセルマが帰るとき、リクハルドは清々したような表情をしていた。だからリクハルドはセルマの想いとは違っていると思っていたのだが……。



「……どうして」


 それまでずっと黙っていたセルマがぼそりと呟いた。



「私」
「……うん」
「本当は……」


 帰りたくなかった、なんてカティヤ王女を前にして言えないことに気がつき、口を閉ざした。



 セルマがいる場所はカティヤ王女の側。

 セルマは何度もそうやって自分に言い聞かせたはずだ。

 だけど数日ぶりにカティヤ王女と会って、強い違和感を覚えたのだ。

 あれほどしっくりきていた場所が、セルマの知らない場所のような違和感。

 それはカティヤ王女も感じているのか、それともリクハルドに遠慮をしているのか。一定の距離を保ったままセルマに近寄ってこようとしなかった。

 そう思うとますますセルマは自分の気持ちを口にすることができなくて、俯いてしまった。
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