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星の島で恋をした【完結】
第5章 《五》
     *

 セルマは男の声にゆっくりと振り返った。

 太陽の下、金色に輝く男が仏頂面でいた。

「どこに行く」
「……帰るの」
「帰る?」

 男の疑問にセルマはこくりとうなずいた。それからおもむろに口を開いた。

「私は呪われているみたいだから」
「だから?」
「……カティヤ王女にも、星にも迷惑を掛けられないわ」

 セルマの答えに男は片眉を上げ、不快感を露わにした。それからたっぷりと考えたようだが、セルマの言葉は端的すぎて、男には理解できなかったようだ。



 セルマはとにかく一刻も早くここを離れなければならないという思いが強かったが、真正面にいる男を見ていると動くことができなくて、じりじりと後退することしかできなかった。

「……どういうことだ? きちんと俺に分かるように説明しろっ!」
 
 ようやく口を開いた男は怒っていて、波打ち際に立つセルマに近寄ろうとして足を踏み出した。それに合わせてセルマは後ずさった。

 ざばんと波が陸地に寄り、セルマの下穿きの裾を濡らした。

「私はきっと、呪いによってカティヤ王女に害をなしてしまう」
「それならば余計に帰れないだろう」
「────っ!」

 それはもっともなことだった。

「でも、ここにいれば、星たちに迷惑を……」

 呪いの内容が分からない。

 セルマ一人だけに及ぶものならともかく、周りに迷惑がかかるものならば──そうであれば、セルマに居場所がない。

 この呪いがいつ発動するのか分からないからこそ、一刻も早くここを離れて、だれにも迷惑のかからないところを探さなければならない。

「だれにも迷惑のかからないところを……探すの」

 そう口にしたが、セルマには思い当たる場所はまったくなかった。なにもできない歯がゆさに、セルマは唇を噛みしめて、うつむいた。

 それを見た男はため息を吐いた。

「ここは星の墓場だ。俺以外は星を喰らう凶暴な獣がいるだけだ」

 男がいる側から風が吹いてきた。透明だった風が男の色を帯びて金色に輝いた。セルマは眩くて目を細めた。

「呪い死ぬ覚悟があるのなら、あの凶暴な獣を道連れにしろ」
「…………!」

 まさかの言葉にセルマは目を見開いた。

「この島にスキアがいる時点で、ここは呪われているのと同然だ。呪われたおまえが一人増えたところで、大差ない」
「……スキア?」
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