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星の島で恋をした【完結】
第5章 《五》
 セルマの答えに男は喉の奥で笑った。

 男が笑う度にセルマの鼓動が早くなる。

「刃を潰した剣で戦えるわけがない」
「それ以外の武器は」
「必要ないからない」

 それはもっともな言葉だったが、セルマは思い出した。

「そういえば、私がここに来たとき、矢を放ってきたじゃない!」

 剣以外の武器はないと男は言うが、セルマが島に来たとき、この男は金色に光る矢をセルマに放ってきた。そのことに言及すれば、男はふんっと鼻で笑った。

「ほう? あれが矢だと見えていたのか」
「馬鹿にしないでっ!」

 せせら笑うように言われ、セルマは言い返すと男はまた笑った。

「あれはおまえの実力を試したんだ。ま、カティヤが懐いてるってことは、実力も確かだとは思ったが、念のためにな」

 なにが念のためになのよ! とセルマは思ったが、にらみ返すだけにした。

「あれに当たっても、しばらく痺れて動けなくなるだけの魔法だ」

 今になってそう聞かされても、あれは明らかに殺気のこもった攻撃だった。信じられなくて首を振ると、男は少し真面目な声音で口を開いた。

「剣がなく、魔法が使えなくとも、おまえは乙女みたいだから、星たちも力を貸してくれるだろう」

 そう言われてセルマは先ほど男にされた仕打ちを思い出して目を見開いた。

「どうした?」

 にやにやとした笑みを浮かべている男を見て、セルマは再び真っ赤になった。

「そんな煽るような顔をして、俺の指がそんなによかったか?」
「おまえは……!」
「くくっ」

 男はセルマの反応を見て笑った。それはどう見てもセルマをからかっているだけのようだった。

「からかわれるのが一番嫌いよ」

 セルマはそれだけ告げると、差し出された男の手を振り払い、ガゼボへと戻った。

 男はセルマがガゼボへ戻ったのを見届けると、どこかへ姿を消した。
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